8-2.絵画に見る色彩調和
【色彩の持つ描写価値と独自価値】
<ハンス・ヤンツェン[美術史学者]>
■描写価値
=対象の写実的再現や空間的距離などのために用いられる色彩のはたらき→写実的絵画になる
■独自価値
=色彩そのものが生み出す力→抽象絵画になる
・象徴性は独自価値のもつ重要な一側面
<ゴッホ「夜のカフェテラス」>
・青と黄にアルルの街のカフェの照明を再現する描写性があり、同時に写実的表現とは言い切れない黄色の広がりや見えるはずのない大きな星の黄と空の対比など、色彩の独自の力が強調されている
【芸術的色彩論】
・画家たちは古くから色彩にはカラーオーダシステムがあると考えてきた
【中世】
・象徴的価値と呼べる用法
・赤、赤紫は独自価値を代表する色彩
■フランス・シャルトル大聖堂内陣周廊部のステンドグラス(聖母子像)
・独自価値が優勢を占めている
■奈良県「高松塚古墳」の壁画
・色彩が方位、四季、人生、宇宙、教養などを示唆する象徴性に結びついている
【ルネサンス時代】
・象徴性からリアリズムや自然主義へ
・中世的な「独自価値」から「描写価値」を基本原則とする方向へ変化
■絵画論
<アルベルティ[建築家・芸術理論家]>
「真の色(原色)はわずか四原色しかない」
・赤、青、緑、褐色
【近代】
・印象主義
・再び色の独自価値が重視された
<モネ「アルジャントゥイユのレガッタ」>
・赤と緑、黄と菫の補色対比を含め印象主義の特徴がうかがえる
■点描
・絵の具をパレット上で混合せず小さな面をモザイクのように画面に併置する表現方法
<シニャック「サン=トロペの港」>
【現代】
抽象絵画が出現
※画像元:GATAG|フリー絵画・版画素材集